駄作の連続!世にも奇妙な物語2021年夏の特別編:感想と考察【ネタバレあり】

テレビ
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私が世にも奇妙な物語に興味を持つようになったのは、以前見たことが2006年放映の「山田祭り」がとても印象に残っているから。短編でしたが、とても後味の悪い作品でした…
あの作品以上の衝撃を求めて、世にも奇妙な物語を見続けています…!
(もちろん、感動する話も好きです!)

というわけで、世にも奇妙な物語2021年夏の特別編の感想と考察です。(ネタバレを含みますのでご注意ください)

あと15秒で死ぬ

あらすじ
深夜、診療所の薬剤室で、作業をしていた薬剤師・三上恵(吉瀬美智子)は、突如、体が動かなくなってしまう。そして目の前に赤い飛沫と静止した弾丸が浮かんでいる。わけがわからずにいると、目の前に死神(梶裕貴)が現れ…

世にも奇妙な物語の第1話と言えば、演技が下手な美人女優を起用することでおなじみですが、本作の主人公は吉瀬美智子さん。
今まで特に悪印象はなかったので安心して見ていたのですが、呪われた第1話に起用されるだけあって、演技が物凄く下手でしたね。
言葉に緊迫感がないですし、「スタート」「ストップ」の言い方からも何の緊張感も伝わってきませんでした…

それに比べて梶裕貴さんは、死神という難しい役どころだったと思いますが、見事な演技だったと思います。
(普通の俳優さんを相手方に据えると吉瀬美智子さんの演技の下手さが際立ってしまうから声優の梶裕貴さんを配役したが、結果的に梶裕貴さんの演技の上手さが際立ってしまった、という芸能事務所の配役ミスが起こったのでは…と思ってしまいました。)

本作の要点は「銃で撃たれた主人公が、残された15秒の間に何をするか」というものです。
主人公は痛みに耐えながら頑張ったな、という印象ですが、それ以前に色々と気になる事が多すぎて…

まず犯人について。
犯人が無計画過ぎて物語に入っていけません。

主人公がいる建物に夜警備員がいるか調べない短慮さ、とか。
夜間、サイレンサーの付いていない銃を、屋外で発射する短慮さ、とか。
覆面をしない短慮さ、とか。(覆面をしていると主人公が犯人の顔を認識できず、物語が破綻してしまいますが…)

無計画以前に、犯人が銃を撃つ→主人公が振り返る→それに驚いた犯人は裏庭に周りもう一度銃を撃つ、という心情が全く理解できません。
その場で2発目を撃てばいいのでは…?

動機も理解できません。
薬剤師がコソコソと薬瓶の前で何かをやっていた→翌日、母が薬剤師が扱っていたものとは別の農薬を飲み自殺→あの薬剤師のせいだ!
という、ちょっとよく分からない動機です。
最後に誤解だと分かり「私何てことを…」と言って泣くのですが、こんな計画性の浅い犯人に殺された主人公が可哀そうです…

可哀そうではあるのですが、主人公も一癖も二癖もある人間です。
・薬を盗られる
・盗られたことを誤魔化す
・誤魔化す過程で犯人の母の遺書を盗る
…なかなかの悪女っぷりです。

主人公は最後の方のシーンで「真実を思い知らせてあげなきゃ!」と遺書を掴みます。
私(主人公)はあなた(犯人)の命を救ってあげたのよ!と言いたいのでしょうが、そもそも睡眠薬を盗まれた事が事件の発端でもありますし、「この遺書をもっと早く見せてくれればお母さんは死なずにすんだのに!」と犯人の怒りが余計増しそうな気がします…。
自業自得、とまでは言いませんが、主人公も色々と配慮が足りない人間だったと思います。

後、全体的に物語の描写のツメが甘すぎます。
・銃弾に薬莢が付いて飛んでいる
・主人公が後ろを振り向いた際、銃を撃った1秒後にも関わらず、銃身が全くぶれていない
・犯人がライフル銃を持っていてもいい必然性を描かない
等々の点は気になります。

そして、ずっと「15:00」の表記が気になりました。
普通15秒を表現するなら「15.00」であって「15:00」は15時を表します。
何かの伏線かな、と思って期待していたのですが、特に何もありませんでしたね…

世にも奇妙な物語らしさを出すのであれば。

主人公が撃たれた際、死神に「家族へのメッセージを残す?復讐する?」と聞かれ、復讐を選択。
→激痛に耐えながらも何とか花による感電装置を作り上げる。
→犯人が感電装置に触れることを期待するが、犯人はその場で動かず警備員に捕まる。
→死神「よく考えてください。警備員がいる建物で夜に銃を撃つ人間が、捕まることを恐れているとでも?残された15秒、有意義に使えば良かったですね…」

主人公の家族写真がアップ…

三途の川アウトレットパーク

あらすじ
辺り一面に霧がかかっている河原で、木村孝(加藤シゲアキ)は目を覚ました。目の前に巨大なショッピングモールが見える。立ち尽くす木村に冥界の住人が声をかける。“ようこそ、三途の川アウトレットパークへ”…

世にも奇妙な物語2012年秋に放送された「来世不動産」からコメディー要素を抜いてお涙頂戴要素を足した作品です。
来世不動産が面白かっただけに、パワーダウン感が拭えないですね…

映像的に仕方ないことですが、三途の川での姿形が死んだ直前のものだとすると、三途の川やアウトレットパークにいるのは80歳を超えている人がほとんどのはずです。(日本人の平均寿命は80歳を超えていますので)
若年層向けのアウトレットだったんですかね…?

アウトレットパーク内の
・モテる要素の「面・筋肉・精神・マメ男」全部合わせて約4千文
・野球の才能80万文
・ノーベル文学賞9千6百万文

という価格設定から見るに、他人からの評価や金銭をどれほど稼ぐかではなく、如何に社会に貢献したか、が徳を積むポイントのようです。
現世でノーベル賞をとった人間が徳を積み、またノーベル賞をとる来世になれる。仮にくじで来世が虫になったとしても、前世で貯めた徳で他人と来世を交換できる。
逆に前世で何の徳も積まなかった人間は、アウトレットパークで何も買えず、他人から一歩劣った状態で人生が始まってしまう。
現代の、一部の人間が富を独占していることに対してのアンチテーゼ的作品ではないでしょう。


「三途の川アウトレットパーク」原作を読みましたが、原作の方が数倍良いです。
買い物が終わったら、必ず今夜中に向こう岸に行かなければならない、という重要ポイントを説明
→「買い物には時間制限がある」ということが分かり、物語にスピード感が出ている
主人公が中学生
→社会人がお金が必要な場合、お金を借りる手段は色々あります(500万円は難しいかもしれませんが)。中学生に用意できる金額ではないので、短絡的に強盗を行った心情が理解できる。
・三途の川を渡る船が出発してから、主人公が船に乗ってないことに気付くヒロイン
→船に乗っているのでもう後戻りが出来ず、どうしようもない悲しさが理解できる。(テレビ局に船を出す予算がなかったのでしょうから仕方のないことですが…)

「加藤シゲアキ」を主人公に据える為に物語を改悪したと分かり、映像作品をさらに楽しめなくなりました。
原作の良いところをこそぎ落としたような作品でした。

デジャヴ

あらすじ
ある朝、目覚めた南野ひかり(上白石萌歌)はふと窓の外を見る。そこにはスーツ姿の男性と女子高生の仲むつまじい父と娘の姿が見えた。しかし、二人の姿が見えなくなった途端に再び同じ光景が繰り返される。“デジャヴ?”そう思った次の瞬間、ひかりは激しい頭痛に襲われ…

そもそも、デジャヴ=過去に経験・体験したことのない、初体験の事柄であるはずにも関わらず、かつて同じような事を体験したことがあるかのような感覚に包まれること、です。

少し前に見た光景が目の前で繰り広げられることは「デジャヴ」とは言わず「見間違い」「疲れ」です。主人公は同じ光景を見た際に「何これ、デジャヴ?」と呟きますが、この時点で嫌な予感はしていました。
自分が見ているものに違和感がある、何か錯覚が生じている、ということを「デジャヴ」として捉えているのは映画「マトリックス」の中だけです)

本作は、映画「インセプション」からスピード感、面白さ、映像的魅力を差し引いた作品です。面白くなかったです。

本作の導入部をざっくり説明すると、
強盗に頭を殴られた主人公は現実では意識不明の状態になる。人間には
「現実」
「意識」
「記憶」
の3層があり、主人公の父が作った記憶を追体験する装置により、意識下では目が覚めている主人公は繰り返し自分が殴られる記憶のシーンを見せられている。(何度も見ている、という認識がない場合「デジャヴ」が生じる?)
というものです。

主人公が記憶を追体験しているのであれば、
・犯行の際の主人公の行動が変化すること(殴られる場所や向き)
・犯行の際の犯人の行動が変化すること(殴る場所や向き)
・実際には起こっていない犯人との格闘シーンが記憶の世界にあること
・主人公の意のままに犯人の行動を操っていること
は起こり得ないはずです。

そうなってくると「主人公の記憶が複数ある」「見せられているものが自分の記憶ではない」と考えた方が合理的であり、「記憶を追体験している」という前提条件が間違いであると言えます。

「意識」の世界にも謎がてんこ盛りです。
「意識」の世界に登場する犯人の姿形があまりに「現実」のものと似通い過ぎています。
「主人公の記憶にない物は見ることも触れることも出来ない」のであれば、「白衣姿の犯人」を主人公はどこで見たのでしょうか??白衣姿で犯行に及んだのであれば、主人公の記憶の中の犯人も白衣であるはずです。
頭に付けている謎の装置も以前見たことはないはずなのに、「現実」のものとそっくりです。


物語にルールがあるのであればルールに従った世界を描くべきです。

そもそも論で言えば
①主人公の父親は、意識の層で主人公に「事件の記憶と向き合えば脳が刺激されて目を覚ますかもしれない」と最初から説明すれば良かったんじゃ…?
②主人公が見た映像を映し出す装置があるのであれば、その映像を細かく分析するので事足りるのでは…?

などと思ってしまいます。

①に対しては、意識の世界に干渉する時間制限を設ける
②に対しては、自分が認識している物≒目に見えている物であるので、主人公がしっかりと認識しないと映像にも映らない
などの手段を描けば良かったように思います。

後はまあ…
催眠に関する研究論文を書く能力がある産業スパイが、押し込み強盗のような真似をするか疑問が残ります。
家族不在の時間なんていくらでもあるでしょうし…

また、自宅からデータを盗むことに成功したのであれば、もう教授に用はない訳ですから、リスクを冒して教授や被害者である主人公の前に姿を現す必然性も理解できません。
犯人が「以前からいた助手」であれば教授に恨みがあり、データを盗んだり教授の妻や娘に危害を加えることに理解はできるのですが…

そして、世にも奇妙な物語2021夏に出てくる犯人達は皆素顔のまま犯行に及ぶのが流行なんですかね…?

ラストシーンもインセプションのパクリです。
インセプションのラストが成立していたのは最後の選択肢が物語のルールに準拠した純粋な2択だったからです。
本作はそもそも物語のルールが破綻していますので、最後のシーンを見ても「ふーん」としか思えません。

インセプションとマトリックスの良いとこどりをしようとしたら全て失敗している作品でした

成る

あらすじ
岩屋賢太郎(又吉直樹)が対局に臨んでいる。この日の相手はAI棋士“不惑”。岩屋が駒を返すと、“朮”という見たことのない文字が…

駄作でした。
コメディー作品としても、お涙頂戴作品としても中途半端であり、何が面白いのかちょっと理解出来ませんでした。(コメディーに全振りすれば、まだ見れた作品になったと思います)

まず、又吉さんの演技が下手過ぎて見ていられなかったです。何を思って又吉さんに依頼したんですかね?見た目?

また、岩屋7段が「こんなの将棋じゃないだろ!」と言っていますから、将棋の対局であることが分かります。
将棋の対局であるのであれば、歩が成って「朮」になるのはルール違反なので、この時点で不惑の負けです。最後まで「将棋」という単語を出さない方が良かったと思います。

そして、将棋棋士が不倫スキャンダルで週刊誌に撮られる、というのも少し疑問です。
通常の7段が不倫スキャンダルを起こしても「…誰?」となるため、週刊誌に載らないと思います。
岩屋7段はAIの相手として指名されているので、余程新進気鋭であるか、又は大棋士なんでしょうが7段と紹介されているので無冠である可能性が高いですし…

さらに言えば、解説者は将棋のプロ棋士の方がリアリティがあって良かったと思います。(藤井猛九段とか)

物語のオチもまた奥さんを裏切っているようなもの。
見てどういう感情になればいいのか理解できない作品でした。

総評

全体的に俳優の演技が物語への没入を妨げていたと思います。

「あと15秒で死ぬ」は原作があるみたいなので読んでみたいですね。
「三途の川アウトレットパーク」は原作をパワーダウンさせた作品。
「デジャヴ」は映画インセプションをパクリ損ねた作品。
「成る」はそもそも私には理解できない作品でした。

今回は特にですが、奇妙さを感じない作品が多かったです。
強いて言えば「デジャヴ」なんでしょうが、物語の破綻具合が酷かったため、ラストシーンも面白くなかったです。ラストシーン、何度見ても「デジャヴ」ではないですし…

見てよかった度:☆(「三途の川アウトレットパーク」の原作は面白かったです )
また見たい度 :(録画したデータを消しました)
「来世不動産」は名作だった度:☆☆☆☆☆

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