もう名作を見ることは出来ないのか…世にも奇妙な物語2020年秋の特別編:感想と考察

テレビ
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私が世にも奇妙な物語に興味を持つようになったのは、以前見た2006年放映の「山田祭り」がとても印象に残っているから。短編でしたが、とても後味の悪い作品でした…
あの作品以上の衝撃を求めて、世にも奇妙な物語を見続けています…!
(もちろん、感動する話も好きです!)

というわけで、世にも奇妙な物語2020年秋の特別編の感想と考察です。(ネタバレを含みますのでご注意ください)

コインランドリー

あらすじ
派遣切りにあったフリーター橋本学(濱田岳)はコインランドリーに来ていた。乾燥機を使って待っている間、ふと「ビール飲みてぇ」とつぶやくと、乾燥機の中にビールが入っている…そこへ怪しげな清掃員(コロッケ)がやってきて、「この乾燥機はお願いをすると、欲しいものが何でも手に入るのだ」と教えてくれ…

世にも奇妙な物語の第1話と言えば、演技が下手な美人女優を起用することでおなじみですが、本作のヒロイン:岡崎紗絵さんは好演していたと思います。

さて、肝心の作品ですが、「乾燥機から出した物は、1日で消える」という設定を活かし切れていなかったな、という印象です。

願いを叶える乾燥機に関して、管理人さんが言った条件をまとめると

・乾燥機の前でお願いすると、何でも欲しい物が出てくる(主人公が「ビール飲みてえ」と言っただけでビールが出現する)
・出した物は1日で消える(主人公の前でビールの缶やスーツが霧散した)
・一つのお願いをした後、時間を空けなくても次のお願いをすることが可能(美人の後、清楚系の美人を呼んだらすぐ出た)

といったところでしょうか。

上記条件に加え、管理人が不気味な顔で
・何でも出せるけど、人は出しちゃダメ
と言って来ますが、この条件が最後まで意味不明でした。倫理観的なことを説いていたのですかね…?

物語としても「たまたまコインランドリーで出会った冴えない男に執着する原因するヒロインの心情」が理解できなかったため、作品に入り込めなかったです。
単純に好きだという理由で、気の強そうな美人と取っ組み合いをする理由が理解できませんね…
せめて元カノとか、親戚とか、古い知り合いとか、何かしらの肩書きが欲しかったです。

ヒロインが主人公にとって都合が良すぎるので、「あのヒロインは主人公が乾燥機から出しているのか!」と思ったほどです。


もっと後味を悪くするのであれば、
・一つのお願いをした後次のお願いをすると、前のお願いで出現した物は消える
という条件を加えることでしょうか。
(服をお願いした後に現金をお願いしたら主人公がパンツ1枚になるなど、映像的にも面白いと思います)

最後のシーンですが、

(前提として、「主人公は前のお願いで出現した物は消える」ことを知っている)

乾燥機から出てくる主人公。
ヒロイン「良かった。帰ってきてくれた…!」

何が起こったか瞬時に悟った主人公は急いで外を見るが、女の子は消え、与えた宝石が散らばっているだけ。
コインランドリー入り口でうずくまる主人公。

ヒロイン「安心したらお腹空いちゃった。ケーキ食べたいな…」
主人公「ダメ…」

暗転


私なら乾燥機をどう活用するか考えましたが、24時間で必ず消えるのならば「好きな物を好きなだけ飲み食いする」ことに使います。


追記
調べてみたら、原作:ロッカールーム(鈴木裕斗)があるんですね。
漫画の方が物語としてとても面白いです。「人は出しちゃダメ」という条件もうまく回収しています。後味の悪さが桁違いです。
下手なアレンジをせずに、原作のまま放送していた方がマシだったと思います。

タテモトマサコ

あらすじ
志倉楓(成海璃子)は同じ会社の近藤雅也(佐伯大地)からプロポーズを受け、幸せな時間を過ごすが、近藤はプロポーズの翌日、屋上から飛び降り自殺した。近藤が死ぬ前、館本雅子(大竹しのぶ)と揉めているところを見たという人物が現れ…

鼻血のタイミングに統一性を持たせて欲しかったですね。
能力をかけられたら鼻血が出るのか、能力に対抗したら鼻血が出るのか…

また、登場人物の絶望的な察しの悪さが気になります。
タテモトに関わった人が複数人死んでいることから、どう考えてもタテモトの能力は「記憶を消すこと」ではないはずです。
(近藤を屋上に呼び出し「屋上にいる記憶」を消し転落死させた、という可能性もありますが、普通に考えて「人を操る」能力でしょう。もちろん「人を操る」能力は荒唐無稽ですが、「記憶を消す」能力を思いついていて何故「人を操る」能力に思い至らないのか理解に苦しみます)

能力に察しがつく以上、屋上での対決シーンは全く面白くありません。
タテモトマサコが訳の分からないことを言うシーンがだらだらと続くだけです。
「人を操る能力がありながら何故横領という小さな犯罪をするのか」という疑問に対する答えである「タテモトは変な人だから」ということに説得力を持たせるためだったのかもしれませんが…。あのシーンのセリフ回しは理解に苦しみます。


そして、タテモトの能力に関して腑に落ちない点がいくつもあります。

最後の方のシーンでタテモトが総務課の皆さんに対して「何の話ですか?」と聞いていますが、それに対する総務課の返答は「どなたですか?」でした。「何の話をしていたか」について答えるはずです…

また、最後のシーンで大勢の人に「聞かないで!」「音を止めて!」と言っていますが、誰もそれに従いません。
自分の事を認識していない相手には能力が効かない、などの制約があるんでしょうか。謎です…

そして、主人公とタテモトの対決シーンの会話を全て会社のメールで流しているということは、
「どこまでご存じですか?」
「では知っていることを話してください。どうぞ」
「誰かに私の事を話しました?」
「会社にいると近藤君のことを思い出すから、辞めてどこか遠くへ行くといいと思います」
というタテモトのセリフも全社員が聞いたはずです。
何故、これに対して皆さんノーリアクションなのでしょうか?
(主人公が音声を編集していたんですかね?何のために?)


能力とは別に気になる点と言えば、主人公のタテモトに対する復讐が弱すぎる点です。
タテモトが「タテモトマサコのことは忘れなさい」という音声を聞いたから「私は誰~!」で話が終わりましたが、それでなかったらタテモトのことを忘れた社員に「私の事を思い出して」と言うか、若しくは別の会社でまた新たに働き始めればいいだけです。

タテモトの意味不明な演出(トイレでの独り言、最後の歩いてくるシーンなど)を少なくして、能力の詳細な説明をした方が面白かったと思います。
世にも奇妙な物語に時々現れる、「難しいことをやろうとしたら細部が詰め切れておらず失敗した話」の典型的パターンだったように思います。

イマジナリーフレンド

あらすじ
大学で心理学を専攻する大学生の原田早希(広瀬すず)。ある日、突然うさぎのぬいぐるみの形をしたイマジナリーフレンドが現れた。原田の目にしか見えないイマジナリーフレンドの出現は、事件の前兆に過ぎなかった…

物語に奇妙さが足りません!
現在主人公の前に現れているイマジナリーフレンドは、幼少期に主人公の前に現れたイマジナリーフレンドと同一のものです。
とすると、「何故主人公にイマジナリーフレンドが見えるのか?」に対する回答は「主人公は前からイマジナリーフレンドが見えやすい体質だった」ということであるため、物語に奇妙さがなくなります。
イマジナリーフレンドは幼少期に主人公の友達になってくれた、ということまで説明されますので「イマジナリーフレンドは何のために現れたのか」という点も「いじめられている幼馴染を救うためor友達になるため」であろうことが容易に想像できます。

そこから視聴者を裏切ってこそ、世にも奇妙な物語には奇妙さが生まれるはずです

最終的に急に死んだお姉ちゃんの話を無理矢理ねじ込んでお涙頂戴にもっていったことも残念です。
世にも奇妙な物語に出てくる優男はだいたい悪者、という定説どおりの作品でした。

アップデート家族

あらすじ
祖父母と子供の三世代で暮らす黒崎家。一家団欒での食事というのは遥か遠い過去と化し、今では殺伐とした乾いた光景になってしまっている。家庭の中で肩身の狭い思いをしていた黒崎睦夫(高橋克実)は、ある日の新聞広告に「ファミリーアップデーター」という新製品が掲載されているのが目に留まり…

2020年秋の特別編一番の駄作です。

夫にバナナを投げつける妻、食卓でタバコをふかす息子1、お父さんのおかずを無言で盗る息子2、お父さんを無視する&お父さんのことを「お前」と言う娘…
黒崎でなくても家族をアップデートしたくなります。

また、おばあちゃんが置物のBになった後、娘がBを抱えて泣いていますが、娘をツッコミ役にしている以上泣かせたのは失敗です。

ギャグならギャグ、お涙頂戴ならお涙頂戴、奇妙なら奇妙、どれかで統一する気がないせいで、話がぐちゃぐちゃです。
ギャグでいくなら、「ファミリーアップデーターのCM」という見せ方にして、笑い声でもかぶせた方がまだ見れたと思います。
これを作った人は、この物語を見た後、視聴者にどういう感情になってほしかったんですかね?


調べてみたら、原作:アップデート家族(チョモランマ服部)があるんですね。
疾走感のある展開でギャグ漫画としてとても面白いです。オチも漫画の方が面白いです。

総評

マンガを原作にするのはいいと思いますが、映像には映像の良さがあると思います。「コインランドリー」「アップデート家族」は、マンガの良さ、映像の良さのどっちも活かしきれていない中途半端な作品でした。
4つ作品があって4作品とも心に刺さらない、という奇妙な体験が出来ました。

見てよかった度:☆(コインランドリー原作の「ロッカールーム」を知れたのは良かったです)
また見たい度 :(今作は面白さを一つも見出だせません)
物語を創造する力がテレビから失われつつある度:☆☆☆☆

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