赤ずきん 旅の途中で死体と出会う。 感想【ネタバレあり】

感想
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あらすじ

童話×ミステリ

森の中のお菓子の家。走り抜けるカボチャの馬車。お城で、眠り続けるお姫様。
次から次へと起きる事件を赤ずきんがスッキリ解決!

双葉社 帯より

グリム童話をモチーフにした連作ミステリです。
それぞれの話の中で殺人事件が起き、居合わせた赤ずきんが解決していくというもの。
映像化も決定している話題作です。

感想

あまり連作系ミステリは読まないのですが…この度、映像化するということで興味が湧き読んでみました。

知っている童話がモチーフなので、話の設定がすんなり入ってきて良いですね!
文章も読みやすく、すらすらと読み進めることが出来ます。
表紙のイラストも面白く、特に赤ずきんの表情が良い味を出しています。
物語としては、最初から最後まで面白かったです。
映像化では、主演が橋本環奈さんとの事。
ぴったりのキャストですね! それはそれは可愛い赤ずきんが見れると思います。

さて、物語としては面白かったです。
では、ミステリとしてはどうでしょう?

個人的感想ですが、ミステリとしてはイマイチだった印象です。

ガラスの靴の共犯者


1話目の「ガラスの靴の共犯者」ですが、ところどころで納得いかない点が多いです。
継母はハンス=要注意人物って認識していたのに、その娘のマルゴーがケーキに釣られて小屋へ行くのはちょっとおかしいです…。
「キイチゴが取りに行けなくなるから靴を捨てるはずがない」というのも…姉が意地悪なら普通にやると思います。だってそれが嫌がらせですから。
なんだか、色々伏線らしきものはあるけど、それと真相が結び付きにくいです。
登場人物自体は少ないし、怪しい描写もあからさまなので、犯人自体は推測容易です。
ですが、犯行方法とか、一連の流れといったものを解き明かすのは難しかったです。
別にこの真相じゃなくても成立するよね?と思ってしまいます。

甘い密室の崩壊

2話目の「甘い密室の崩壊」では…
まず、なぜ屋根と一緒に煙突を消さないのか不思議。
魔女が竈に入れられた時、竈を消さなかったのも不思議。
ふやけていたり、崩れかけているお菓子の家を移動出来たのも不思議。
いや、不思議なことだらけです。さすが童話!

ヘンゼルとグレーテルの関係はいい感じに不気味に描かれていて良かったですね。
二人の関係を考えると、グレーテルはもっと真っ黒な黒幕的役割でもいいいくらいです。
一方、お父さんはあまりにも木偶の棒でしたね…。
黒幕はヘンゼル! かと思いきや、グレーテル! と思いきや、お父さん! という流れが読みたかったなと思います。


眠れる森の秘密たち


3話目の「眠れる森の秘密たち」ですが…
この話だけ登場人物が掴みにくかったです。
名前がすんなり入ってきませんでした(笑)

設定として、眠れる森の美女の話なのに、美女は眠りについていてまだ40年というのが面白いですね。
おまけに国は存続中(眠りについていない)で、宰相が治めているというのもいいです。
冤罪を晴らすうちに、色々な人物の秘密を暴いていく流れも興味深かったですね。
イタリア人の大工さんはかなり能力の高い人物でした。

少女よ、野望のマッチを灯せ

最後の「少女よ、野望のマッチを灯せ」は…色々と思う所がある話でした。
これまでミステリっぽくやって来たのに、ここに来て魔法が大活躍なのがちょっと…。
魔法使いにお願いすれば、たいていの事が出来ちゃいますよね…。
そんな中、工場の機械トリックとか必要あります? せっかくの仕掛けが色あせてしまった印象を受けます。
1~3話の登場人物が再登場して、最後の話に相応しい雰囲気は出ていますが。
そのせいで、赤ずきんの頭の良さが埋もれてしまったように思います。

そもそも!敵役のエレンですが!
もっとうまく立ち回って欲しいです。
ライバル工場を吸収した時点で「夢が見られるマッチ」を止めて「よく燃えるマッチ」一本で売り出すとか!
国のお偉方に裏で話を通しておくとか!
ラスボスとしては弱かったです。

総評

「童話×ミステリ」テイストと思えばよく出来ています。
こんなトリック使ったのか~、だからあの時…、なるほどそう来たか、と思わせてくれます。
致命的な破綻もなく、おおよそ納得できる流れと結末です。
ただ、謎解き目的で読むには不向きですね。

登場人物達の行動も読み取りやすく、皆自分の欲望に忠実で、童話の残酷さ・ダークさを感じられます。
ちょいちょい男女の諸事情を挟む点も、グリム童話っぽいなと思います。
が、そのせいで小学生の息子に「これ読んでみれば?」と勧められないのは残念かな。

映像化したら、橋本環奈さんの赤ずきんは可愛いこと間違いなしでしょう!

感想
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