名作と駄作が混在!世にも奇妙な物語2020年夏の特別編:感想と考察【ネタバレあり】

世にも奇妙な(2020)テレビ
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私が世にも奇妙な物語に興味を持つようになったのは、以前見たことが2006年放映の「山田祭り」がとても印象に残っているから。短編でしたが、とても後味の悪い作品でした…
あの作品以上の衝撃を求めて、世にも奇妙な物語を見続けています…!
(もちろん、感動する話も好きです!)

というわけで、世にも奇妙な物語2020年夏の特別編の感想と考察です。(ネタバレを含みますのでご注意ください)

しみ

あらすじ
クリーニング店の娘である三浦あずさ(広瀬アリス)は、ある日クリーニング店を訪れた黒ずくめの女からシャツに着いたチョコレートのしみを抜いてほしいと依頼される。しみは取れないばかりか、次第に人間の顔に変化するようになり…

世にも奇妙な物語の第1話と言えば、演技が下手な美人女優を起用することでおなじみですが、本作の主人公:広瀬アリスさんの演技はとても良く、作品に集中することが出来ました!

本作の要点は「テレビの視聴者が見ているものは、身体が動かない主人公が頭の中で作った作品であった」というものでした。
視聴者がそのことを見抜くヒントは、序盤の「主人公が頭痛を覚えた後、画面がブラックアウトする」というところでしょうか。

主人公が倒れる→夢の中の物語だった、という作品は見たことがある気がしますが、「身体は動かないが意識はある主人公が、自分の視覚・聴覚で感じたことから物語を紡いでいる」という切り口を使っていることは面白いな、と感じました。

この切り口を使うことで、作品を見ている際に感じていた違和感にしっかりと説明がつきます。
・謎の女があまりいい天気でないのにいつも「今日もいいお天気ですね」と言うこと
・殺人の証拠隠滅に協力したパパが「真面目にやってきたのに何でこんな仕打ちを受けなきゃいけないんだ」と言っていること
・病院で謎のシミが広がり死が迫っているママが「あずさ、私はずっとそばにいる」と言っていること(普通は「大好きだよ」とか「遠くから見てるよ」とか)
・被害者の血の染みを落としたとしても、現場に証拠があればすぐ捕まるに決まっているのに、パパの友人が長年警察から逃げ切れていたこと
などです。
自分の視界に入るもの(看護師さんやお医者さん、謎のマーク等)や自分の耳に入ること(看護師さんやパパ・ママの励ましの声等)を使って物語を紡いでいるのですから、多少の齟齬が生じることは仕方ありません。

また、警察に捕まらない、といったご都合主義も、「創作の中の出来事」なので当然であると言えます。

残念だった点を一つ挙げるとすると、
・染みつきシャツを手渡した女が書いた伝票の電話番号欄に「0438」(千葉県内の市外局番)と書かれていたこと
と、
・謎の女を殺害した主人公が聞くラジオから「栃木県警は殺人事件として~」と流れていること
の整合性が取れない点でしょうか。

クリーニング店が栃木県にあるとすると、主人公は「0438」の電話番号に違和感を感じるはずですし、
クリーニング店が千葉県にあるとすると、栃木県にある女の家までついていったシーンと整合性がとれません(主人公がものすごく健脚だった可能性はありますが…)

重箱の隅をつつくような点はともかくとして、役者さんたちの演技力や最後の視聴者を騙すどんでん返しの切り口、その切り口をうまく物語に落とし込んでいることなど、世にも奇妙な物語の名作に肩を並べる作品でした。
七峰医師や看護師さんの職員番号が「0438」だったとしたら、個人的には満点に近い作品でした。

3つの願い

あらすじ
豪邸で妻と食事を摂っていた若林(伊藤英明)が目を離した15秒程の間に妻が突然失踪した。警察は、妻の出身地などを全く知らない若林を疑っていた。そんな中若林は突然5年前に発見したランプの話を語り出し…

ランプの魔人(滝藤賢一)がTPOに合わせてスーツを着ている、というシーンは面白かったですし、滝藤さんの飄々とした演技も終盤の鬼気迫る演技もとても素晴らしく作品にとても集中することが出来ました。

物語としては、オチまでの道筋が途中から一本道だったように思います。
誘拐犯は「ライター」「記憶を取り戻した妻」「魔人」「警察関係者」が案に上がりますが、家の防犯カメラの映像が急に乱れることや、警察無線が急に故障するなど、到底一般人ではなしえない現象が起こっていることから、「魔人」の仕業である可能性が非常に高いと考えざるを得ません。

また、3つ目の願いが何なのか最後まで引っ張っていましたが、過去に病気がちだった主人公が、現在は全くそんな様子を見せていないことから最後の願いは健康に関することだと察しがつきます。なので、「3つ目の願いは…私の健康に関することです」と多少のネタバラシをしていても良かったように思います。(3つ目の願いを「願っていた」ことを明かしてしまうのはもったいないので、最後まで引っ張った可能性はありますが…)

魔人の能力は「無から有を生み出すことが出来ない」「主人が望むものをどこからか取り寄せてくる」ということで、その「どこか」の部分が「別の誰か」ではなく「未来の自分」だった。
という点が本作の要点です。
仕組みとして興味深いですが、奥さんは「どこかから取り寄せられ」+「過去の主人公に渡された」訳ですから、そのあたりの説明がもう少し詳しく欲しかったです。
(これは「5年前の失踪者に妻がいなかった理由」に繋がります。妻が失踪しているのは「現在」です。)

「未来の自分から」という点を強調するのであれば
・過去、魔人から5億を貰った100万円の帯に聞いたことがない金融機関名が書いてある5年の間で合併して誕生した金融機関名。金融機関の合併も何気なくニュースで流す
・妻と出会って5年経つが、妻は変わらず美しい→妻は5年後過去に戻ることになるので、歳を取らないよう魔人が細工していた
・心臓の移植手術は失敗する可能性もあったが、誰かの心臓は不思議と自分に馴染んだ。これも魔人の力だろうか→自分の心臓だから
等々の仕掛けを入れておいたらより面白くなったと思います。

作品のオチとして、後味の悪さを考えるなら「誘拐は記憶を取り戻した妻の狂言」案でしょうか。
妻「私もランプの魔人に願ったの!たくさんのお金!若いイケメン(ライター佐藤君)!そして最後に願うのは…あなたが消えて自分の人生を取り戻すことよ!」
暗闇から現れるイケメンと魔人。そして魔人に消される主人公。
妻「これで全てが手に入ったわ!」
グサッ!イケメンに刺される妻。
イケメン「僕も奪われたものを取り戻したかっただけですよ…」(ライター佐藤君の親は5年前に5億奪われている)
魔人高笑い。
…ですかね。

「無から有を生み出すことが出来ない」「主人が望むものをどこからか取り寄せてくる」という願い事をランプの魔人が叶えてくれる場合、どういう願い事をするのが自分にとって最も効果的なのか…ふと悩んでしまう作品でした。

燃えない親父

あらすじ
松田春香(杏)は亡くなった父親の火葬を行うために家族と共に火葬場を訪れていた。しかし、いざ父親の遺体を火葬しようとしても遺体が全く燃えない。「お父さんに何か心残りがあるのではないか」と指摘された春香たちはその“心残り”が何なのかを懸命に探ろうとするが…

コメディー&お涙頂戴タッチの作品がなかったところだったので、この作品がそれにあたるのだと思って見ていました。
案の定、こういう作品にありがちの「心残りはこれだ!」→「やっぱり違う」を何ターンか繰り返し、最後は家族がまとまる、という典型的な作品でした。

「心残りはこれだ!」→「やっぱり違う」のシーンを飽きさせないために、心残りであるものが印象的である必要がありますが、「田中みな実さんのサイン入り写真集」という現実に存在するものを用いていたことは面白かったです。(写真集は結局燃やされました。田中みな実さん、テレビ局に嫌われているんですかね…

個人的には、火葬場職員を演じた皆川猿時さんの演技が残念でした。
コメディーに振り切れていなかったこと、控室に飛び込んでくるときに視線をどこに置いているのか不明瞭だったこと、最後のシーンで指輪がないことにあんなに驚かなくてもいいことなどですね。

私の感性が古いのか、こういう作品を「遺体が燃え残る」ことで表現するのは、少し不謹慎なのでは…と思ってしまったので、あまり作品を楽しむことが出来ませんでした。

また、故人の心残りの候補であった「フィリピンパブ(?)のジャスミンさん達」も「クネクネしたおじ様」も「印象的」ではあるのですが、それが「面白いのか」と考えるとまた別です。別にジャスミンさん達やクネクネおじ様が心残りだとしても全く問題ないわけですから。
「趣味で作った人間と同じ大きさの木彫りの熊」とかなら気持ちよく笑えたと思います。

配信者

あらすじ
情報番組のADとして働いている赤城良太(白洲迅)は、SNSで配信も行っていた。配信中、「バズるネタを教えようか」というコメントとともに届いたURLをクリックすると、そこに映し出されたのはまさに自分が勤めているテレビ局の地下駐車場で…

被害者が逃げる→配信者が追いかける、というシーンをただひたすら繰り返す作品。
配信者の素性も謎ですし、殺されたはずの人たちが起き上がっていたことの説明もありません。
何を表現したいのか全く不明ですし、全く面白くなかったです。
まさか「バスることを目的に、何でもかんでもやっちゃいけないよ」とか、そういうことを言いたい作品だったんですかね…??
もしくは、「『バズり』のために配信者がやっていることは、今まで視聴率のためにテレビカメラがやっていたことだ」ということを敢えてテレビで表現することによる、テレビ業界に対する問題提起なんですかね…??

ストーリーテラー

第1話の導入の際、タモリさんは「タイムマシン」「親殺しのパラドックス」の話をし、第1話が始まります。
てっきりそういう関連の話が始まると思っていましたが、「しみ」が始まり拍子抜けしました…
当初は「3つの願い」と順番が逆だったんですかね?

2話目と3話目の間、3話目と4話目の間で、炎上シーンをニコニコ動画の字幕のようなもので表現していましたが、テレビ屋さんの感性がかなり古いところで止まっているようですね…
また、インターネットで騒がれることに対し、自分たちに都合がいいことは「バズり」と呼び、自分たちに都合が悪いことは「炎上」と呼ぶ、その所謂ダブスタ感を感じ少し寂しくなりました。

総評

いつもは2時間の枠で4作品やっていたような気が…
作品数を絞ることで、一つ一つの作品の質をあげることが目的なのでしょうが(コロナの影響?)、ちょっとぐだついた作品もあったので、作品時間を延ばすことは諸刃の剣だと思いました。
「しみ」「3つの願い」は個人的に好みであり、とても面白く、とても奇妙な物語でした。
「燃えない親父」は好みではなかったですが、奇妙な物語のコメディー&お涙頂戴枠に相応しい、面白い作品でした。
「配信者」は…ノーコメントです。何か奇妙さがあったら是非教えて欲しいです。

見てよかった度:☆☆☆☆(「しみ」はとても面白かったです!)
また見たい度 :☆☆☆(俳優さん達の演技に引き込まれます)
秋にまた特別編をやるそうなのでそちらも見たい度:☆☆☆☆☆

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