北山猛邦さんの「瑠璃城」読んでみました。
本格ミステリということで読んでみたのですが、まさかの話に驚きです。
個人的にとても面白かったので、感想書いておきます。
あらすじ
密室と化した図書館内で女性が短剣で貫かれる。周囲には七芒星の模様が。城から六人の男が消失、首を切られ、たどり着けるはずのない湖で発見される。さらに東部を失くした人間が突然現れたり、人の出入りの無い状況で四体もの死体が消える。恐るべき不可能犯罪の運命的な連鎖を描く本格ミステリ。推薦・有栖川有栖 講談社ノベルス裏表紙より
私はこの本を読む前に北山さんの他作品「月灯館の殺人」を読みました。
久しぶりに面白いミステリだったので、北山さんの過去作に手を出した次第です。
この「瑠璃城」もあらすじに本格ミステリと明記されています! 楽しみ!
感想
開始数ページ読んでの感想…
思ってたのと全然違う!!
いや~びっくりしました。
てっきり「瑠璃城と呼ばれる洋館で殺人事件が巻き起こり、巻き込まれた主人公or探偵が謎に迫る話」だと思っていたのですが。
ラブストリー要素の多さよ!北山さん、こんな話書くんですね…。
ミステリとしては…はい、もうラブの方に意識が行ってしまって、謎解きどころじゃありませんでした。
謎自体もちょっと微妙だし、読者が解くような謎でもないのでまぁ良いか。
設定・登場人物は、ともに特殊で面白かったです。
結局どうして生まれ変わるのかは全然わからなかったけど、設定として諸々受け入れれば楽しく読めます。
ネタバレ感想、諸々
以下ネタバレ含みます。
率直に言って、本格ミステリじゃなくファンタジー小説です!
生まれ変わりを巡る恋愛おとぎ話に、少しミステリ要素を混ぜた感じでした。
私は本格ミステリが好きなので、本来なら「この話…あり得ない!」と言いたいところなのですが…
話自体が面白かったので、文句は無しです!
まず、本格ミステリ&定番のクローズドサークルかと思いきや、序盤から思い切りそれを裏切ってくるのがとても良かったです。
場所も時間もポンポン飛んで、登場人物も記憶があったりなかったり。
一方、首無し死体・変な城・変な建物・人間消失などなど、ミステリっぽい物がてんこ盛りだったりします。
メインの謎は「6人がどうやって湖に移動したか」と「4体の死体がどうやって消えたか」辺りでしょうか?
前者は巨大滑り台&川の逆流現象(犯人の意図有)で、後者は水の移動(犯人の意図なし)が真相でした。
前者はともかく、後者の謎は読者に解かせる気ないですよね?
だって偶然の自然現象だし。謎解きの記述も物凄く適当だったし。
そういった意味で、やはり本格ミステリとしては読まないほうが賢明です。
生まれ変わる原因とか、短剣の力とか、重複する原因とか、そういったものは謎のままです。
スノウウィの正体も仄めかされてはいますが、スノウウィだけ存在が異質過ぎて違和感がかなり残ります。
その仄めかしの文字も、ちょっと強引すぎる気が。私には全く読めませんでした…。
その他、いろいろよくわからない部分は沢山ありますが、とりあえず大団円(?)的に終わるので後味は良いですね。
悪役だったジョフロアさんも、結局円環から抜け出せた(多分…)ので結果オーライですね!
おめでとう。
トリックスターの役割を担ったスノウウィ、「天国には月が無い。孤独で寂しいだけ」と言っていたけど…物語終了後も他の点世界でひっかきまわしていて欲しいです。
まとめ
本格ミステリではなかったけど、これはこれでとても面白かったです。
ミステリ風恋愛ファンタジーといった感じです。
北山さんは、自身が作品で使ったトリックを、外の作品でネタバレするタイプの作家さんです。
そういった意味で北山作品は読む順番が難しそうです…
