映画・秒速5センチメートル 「手紙はどちらから送らなくなったのか」など各種考察【ネタバレあり】

感想
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さて、映画秒速5センチメートルの感想を第1話第2話第3話と別々にまとめてみました。

物語の結末に賛否があるようですが、個人的には貴樹君の自業自得かな、と思う部分が大きいです…
物語全体を通して新海監督が細かな仕掛けを行っていることが分かりましたので、個人的に気になった点をいくつかまとめてみました!

手紙に関する考察

文通はどちらから終わったのか?

2人の距離が近付き、そして離れたのは手紙による効果が大きいです。
2人の仲を引き裂いた、つまり、手紙を送らなくなったのは、貴樹君・明里ちゃんのどちらなのでしょうか?
まずは、手紙のやり取りについてまとめてみました。

手紙のやりとりまとめ

送り主時期朗読文面内容
明里ちゃん中1の夏1:07~1:23たいへんご無沙汰しております。~
貴樹君××
明里ちゃん中1の秋1:53~2:29
14:47
お返事ありがとう!嬉しかった。~
貴樹君××(返事を悩んでいるシーンあり)
明里ちゃん中1の冬3:14~×寒い日が続きますがお元気ですか?~
貴樹君×3:31※1
明里ちゃん中1の冬4:53~6:16
58:47
3/4の約束とても嬉しいです。~
貴樹君中1(3/4)×5:51(小山駅で風に飛ばされ紛失)
明里ちゃん中1(3/4)×59:01私は貴樹君のことが好きです。~
(別れ際、貴樹君に渡せず)
※2
明里ちゃん××
明里ちゃん高2?×56:33「遠野貴樹さま」のみ ※4

※1
3分31秒に文面が一瞬だけ映ります。
「僕は、今の中学がそれほど気に行ってい
「もし明里が同じ学校」
という文面が見て取れます。

言葉を足すならば、
「僕は、今の中学がそれほど気に入っていません。もし明里が同じ学校だったら…」という文章だと想像できます。
遠回しに好意を伝えようとしていたのですね。

※2
59分1秒頃に文面が一瞬だけ映ります。
「私は貴樹くんのことが好きです。
口ではたぶん言えないけど手紙には書いてしまいます。
初めてあったときから、貴樹くんは強くて優しい男の子でした。
転校してきたばかりの私を貴樹くんは守ってくれました。
貴樹くん、あなたはきっと大丈夫。」

渡せなかったラブレター。
…この手紙が貴樹君の手元に渡っていたら、二人の運命は変わっていたのでしょうか。

※3
内容に関する描写はありませんが、住所は種子島、郵便番号が5桁の手紙になっています。
郵便番号が7桁になったのは平成10年2月2日~なので、中学2年生の種子島引っ越し後~高校2年生の間に手紙が送られていることが分かります。

種子島の住所を明里ちゃんが知っている、ということは、貴樹君は明里ちゃんに種子島の住所を教える手紙を書いた、ということです。

第1話(24分45秒)の2人が別れ際のシーンで貴樹君は「手紙書くよ、電話も!」と言っています。
約束通り手紙を書いて、種子島の住所を伝えたのだと思います。

※4
貴樹君の名前を書いた後、明里ちゃんは机に頭を突っ伏します。
返事に悩んでいるというよりは「貴樹君から返事が来ないな…ここで手紙をまた送ったら重い女と思われるかな…?」と悩んでいたのではないでしょうか。

結論

はっきりとした描写はありませんが、状況証拠的に貴樹君が送らなくなった、と言えると思います。

手紙に関する貴樹君の問題点

2分51秒
明里ちゃんからは可愛い便箋で手紙が届いているのに、貴樹君はただのルーズリーフに書いている…
下書きの可能性もあるけれど、もう少し気を遣おうよ…

5分51秒
明里ちゃんに実際に会いに行く時の手紙もただのルーズリーフに書かれていることが判明…!
ルーズリーフが4枚映っていましたが、そんな量何を書いたのか気になるところです。
ちなみに手紙をトントンしているシーンでは紙が4枚ありますが、手紙を折りたたむシーンでは3枚しか見えないです。(ぴったりくっついているのでしょうか?)

貴樹君の恋愛下手感について

第1話では真っ当に恋愛し、第2話で少し拗らせ、第3話で一つの恋愛が終わりを迎えた貴樹君ですが、あまりスマートな恋愛をしていたとは言えません。
作品全体を通してみると、貴樹君は自分の気持ちを上手に伝えることが出来ていなかったような気がします…
いくつか紹介していこうと思います。

5分35秒
貴樹君が寝ているシーンにルーズリーフが映っていますが、文字だけ見ると英語のような気がします…
まさかと思いますが、かっこつけてラブレターを英語で書いたのかな…!?
(ちなみに、2分52秒「篠原明里さまへ」の手紙を書こうとしているノートのすぐ上に「confession(告白)」とある単語カードがあったりします…)

14分50秒
貴樹君「彼女からの文面は…全て 覚えた」
ちょっと…このセリフにひきました…

24分58秒
貴樹君「あかりへの手紙をなくしてしまったことを、僕はあかりに言わなかった。あのキスと前と後とでは、世界の何もかもが変わってしまったような気がしたからだ」
…チューしたぐらいで彼氏ヅラするな!!

39分01秒
メールを書いては削除するところもそうですが、何よりもメールの文面が自作のポエムであることがちょっともう…フォローのしようがないというか…
(件名:今朝の夢 異星の草原をいつもの少女と歩く。いつものように顔は見えない。空気にはどこか懐かし)

49分31秒
大人になった遠野君が、おそらく明里ちゃんっぽい女性とすれ違うシーンで
貴樹君「今振り返ればきっとあの人も振り返ると強く感じた」
いや、最初から声かけろよ!!

個人的に感じた各種伏線

本から感じる伏線

1分23秒:古典の授業を受ける貴樹君のシーン
授業で扱っている内容は教科書から「竹取物語」
→結局は月に帰ってしまうかぐや姫、というところから、この恋がうまくいかないことを暗示しているのでしょうか?

51分36秒
明里ちゃんが読んでいるのは夏目漱石「こころ」。
これから1カ月後に結婚式をあげる人が読むにはいささか暗い内容のような気がします…
これまた、貴樹君の恋がうまくいかないことを暗示していたのでしょうか?

57分
明里ちゃんが読んでいる本はトルーマン・カポーティ著の「草の竪琴」。

本の内容をざっくり言うと、「ひと夏の冒険物語」
高校生になった明里ちゃんは、すでに貴樹君との思い出を過去にしていることの暗示でしょうか?

貴樹君の家族構成

2分40秒:貴樹君の家が映るシーン。
椅子が3脚しかないことから、3人家族でしょうか?
ホワイトボードに「冷蔵庫にオカズあります。」とあるので、貴樹君の保護者は日常的に夜の時間は家にいないと言えると思います。また、「Newton」がさりげなく置かれていること、種子島に引っ越しになったことから、保護者は宇宙関係のお仕事をしているのでしょう。

一点確実なことは、自宅のホワイトボードのイラスト、マグネット、ティッシュカバーが猫なので、家族の中の誰かは猫好きである、ということです。

ちなみに、第3部:48分52秒。大人になった貴樹君の自室のシーンで、部屋の中にホワイトボードが出てきます。猫のマグネットが付いていることからもしかして、豪徳寺に住んでいたころに使っていた物をそのまま使っているのでしょうか?

消しゴムについて

映画の中で、よく使いかけのお尻がつぶれた消しゴムが登場します。
1分23秒「NOMO TAMBO」や2分52秒「MOMO TONBI」などですが、この意味が分かりません。
手紙を何度も書いては消していることを暗示しているのでしょうか…?
分かる方がいらっしゃいましたら是非共教えて欲しいです!

その他

貴樹君の部活動についてですが、
東京の中学校ではサッカー部。
種子島の中学校ではバスケ部(31分18秒、バスケットボールを持っているシーン)。
高校では弓道部。
団体競技→個人競技に変わってきていることが分かります。
「貴樹君が徐々に内向的になっていることの暗示」とは言えないでしょうか。
…全国の弓道部の皆さまごめんなさい!!

まとめ

伏線についての考察などがあっているかはともかくとして、時代を感じる様々なシーン企業ロゴを細かくいじっている点など、実に細かく作りこまれている映画だな、と思います。
お店の名前が微妙に違っている点など、映画館で一度見ただけでは絶対に気付かないと思いますが、何回も映画を見ることを前提として作られた映画なのでしょうか?

第3話の細かなカットシーンが連続する部分(57分17秒)に、種子島から東京の大学へ行く貴樹君を見送るために、種子島空港まで見送りに来ている花苗ちゃんが映ります。
こういった切ないシーンを描くことが出来る監督が、あのラストシーンを選んだ訳ですから…監督の趣味が前面に押し出されたいい映画だったように思います。

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